映画タイタニックが初めて上映されてから早くも20年以上。
若い年代にはこの映画を見たことすらない人もいるかもしれません。
当時大ヒットとなった映画タイタニックは、映画公開翌年のアカデミー賞において、作品賞を始めとする11の部門で受賞しました。
それに伴い、セリーヌ・ディオンが歌った主題歌も大ヒットし、主人公のジャック役を務めたレオナルド・ディカプリオも一躍時の人となりました。
映画タイタニックが、実在した豪華客船タイタニック号の悲惨な事故を基にしていることはみなさんご存知だとは思います。
実はこのタイタニック号とハリファックスには、深い縁があることはご存知でしょうか。
今回は、そんなタイタニック号とハリファックスにまつわる話を紹介したいと思います。
ハリファックスと歴代最悪の海難事故
タイタニック号の隠された欠陥
映画タイタニックを見たことがある人はもうご存知かとは思いますが、今一度振り返ってみます。
今から108年前の1912年4月10日、大型豪華客船タイタニック号は、イギリスのサウザンプトン港からアメリカニューヨークへの処女航海へと出航しました。
当時、集客競争の真っ只中だったイギリスの海運会社ホワイトスターライン社の期待を一身に背負ったタイタニック号は、沈まない船として世間からも注目されてました。
しかし実はその名声とは裏腹に、構造上数々の欠陥があり、それら一つ一つがあの大惨事を引き起すことになります。
設計者であるトーマス・アンドリューは、舵効きの悪さについて改善する提案をホワイトスターライン社のイズメイ社長にしましたが、工期の遅れを心配したイズメイは、この提案に抵抗を示しました。
当時のタイタニック号船長であったエドワード・ジョン・スミスは、タイタニック号の姉妹船であるオリンピック号の船長を務めた経験もあり、もちろんこの欠陥についてもわかっていました。
映画タイタニックに、設計者トーマスとローズが救命艇の話をするシーンがあります。
トーマスは、タイタニック号には乗客全員が乗船できる、十分な数の救命艇が搭載されていないことを知っていました。
彼はこのことについて、イズメイへ指摘しています。
しかしイズメイは、上流階級が散歩できるアッパーデッキの景観が悪くなるというくだらない理由から、追加の救命艇の搭載を怠ったそうです。
経営難に陥っていたホワイトスター社のイズメイは、なんとしてでもこのタイタニック号の処女航海を成功させる必要がありました。
その虚栄心の現れとして象徴的なのが、煙突の話。
タイタニック号には4つの煙突があったのですが、そのうちの一つは、ただ外観のバランスをとるためだけのダミーだったそうです。
数々の欠陥があったにも関わらず、人の命よりも利益を優先させたホワイトスターライン社は、当時人類史上最悪の海難事故生み出すことになりました。
一流階級の人々とアメリカ移住を夢見た三流階級の人々
映画タイタニックを見たことがある人はよくお分かりかと思いますが、タイタニック号には様々な階級の人々が乗船していました。
映画タイタニックのヒロイン、ローズのような上級階級の人々は、豪華なバルコニー付きの部屋で優雅で快適な航海を楽しんでいました。
一方ジャックがいた三等客室には、ヨーロッパの各地からアメリカへの移住を目的で乗船した人たちもたくさんいたそうです。
救命ボートの話に少し戻りますが、事故の際は救命艇には女性と子供に続いて、上流階級の人々は優先して救命ボートに乗れたそうです。
それでも彼らの中には、タイタニックが沈むわけないと信じず、救命艇に移動することを躊躇していた人もいたそうです。
三等客室にいたほとんどの人々は、その機会すら与えられなかったそうですから今では考えられない世界ですよね。
そして1912年4月15日2時20分、カナダのニューファンドランド沖で真っ二つに折れ、沈んでいきました。
タイタニック号乗客の最後の到着点 ハリファックス
ハリファックスから救助に向かった2隻の汽船
実はハリファックは、タイタニック号沈没現場から一番近い不凍港でした。
そしてこの海難事故の現場へ、2隻の汽船がハリファックスから救助に向かいました。
マッケイ・ベネット号とミニア号です。
この2隻が行った作業はもっぱら遺体の収容だったそうです。
というのも事故当時は春ではありましたが、深夜の大西洋の海水温はー2℃を下回ったと言われています。
多くの犠牲者は、その海水の冷たさから心臓発作を発症若しくは低体温症のため、約20分以内に命を落としたと言われています。
2隻のうちの1隻、マッケイ・ベネットは306体の遺体を収容しハリファックスへ運びましたが、そのうち116体はその場で水葬したそうです。
ハリファックスにある3つの墓地
ハリファックス市内には、タイタニック号の犠牲者が眠る3箇所の共同墓地があります。
そのうちの一つ、フェアビューローンセメタリーに埋葬されている121人の中に「J. DAWSON」と彫られた墓石があります。
これは、当時タイタニック号で船の作業員として乗船していたジョセフ・ドーソンという方のお墓です。
映画タイタニックでレオナルド・ディカプリオが演じたジャック・ドーソンとたまたま同じ苗字(ドーソン)、Jから始まる名(Joseph)であったことから、世界中からレオナルド・ディカプリオのファンが絶えなくお墓参りにきていたために、このお墓の周辺だけ少し芝生がはげてしまったとか。
これは3箇所の共同墓地の一つ、マウントオリヴェットカトリックセメタリーにある、タイタニック号犠牲者が眠る場所です。
中には所持品などから身元を判明することができなかった人々の墓石もあり、その場合は墓石には名前が彫られておらず、ただ 【DIED APRIL 15 1912】 と彫られています。
まとめ
今回はタイタニック号とハリファックスとの関係について紹介しました。
日本にいる時は、タイタニック号は映画の中だけの物語のような気がしていました。
ハリファックス市内にある共同墓地には、実際にタイタニック号の犠牲者が眠っています。
日本ではあまり知られてはいませんが、ここは世界中からタイタニックファンが訪れる、巡礼地との一つなっています。
また、観光名所としてガイドブックにも載っている大西洋海洋博物館にも、事故現場から発見された本物のタイタニック号で使用されていたデッキチェアや、子供の靴などが展示されています。
100年以上の時を越えて、現在タイタニック号2が建設中らしいです。
2022年に初航海が予定されているそうで、内装までタイタニック号を忠実に再現しているとか。
しかしみなさん気になるのは安全面だと思います。
海外メディアによると、救助艇の数はちゃんと法定数を搭載しているそうなのでその点だけはご安心を。
おそらくタイタニック号2の初航海の際には、日本でも大きなニュースになるんではないでしょうか。